トヨタ生産方式: 製造現場の視点 目的の共有化
前回に続いて。製造業について。ひいてはトヨタ生産方式の私なり解釈の解説です。
トヨタ生産方式関連ワード:「やらされの改善」「みえる化」
そもそもですが、人間の特性は楽な方向に流れるという特性があります。
言い方を変えれば自然な状態に流れるものです。
自然でない方向に流すためには、無理やり習慣化して、無理なことを自然にする必要があります。
哲学的な内容になってしまっていますが、これが現実です。
無理に慣れてしまうと、それが無理だと感じなくなるということもありますが、基本的には無理は続かない、これをまずは理解してください。
そして、経営層の視点と製造現場の視点のギャップはここで問題があります。
経営層の視点のみで改善を行うと、目的が違うため製造現場では受け入れられない改善になります。
例えば、不良品を減らすために部品加工後採寸してチェックシートに記入する、という改善を行ったとしましょう。(実際に採寸やチェックシートは当然のことのように行われていますが、今回は置いておきましょう)
それは、採寸するという手間が増えるため、製造現場からすると「面倒」です。
面倒なことは徐々に形骸化していき、行われなくなってきます。
面倒なので、忙しい時などにチェックシートに空欄ができ始め、最終的には形骸化する。
他の例で、製造現場ではなく日常生活でも、自然な場所にない片付けをすると、また徐々に汚くなっていきますよね。
このように無理は通常続きません。
トヨタ生産方式では、このような「やらされ」の改善はうまくいかないといわれています。
それでは、「やらされ」ないためには。
それは、「目的に向かうこと」ことです。
前回の記事でもお分かりかもしれませんが、経営層と製造現場、何がここまで違うのかというと「目的」が違うのです。
したがって、目的を共有化をまずは真っ先に行うべきです。
それが理解できない限り「なんでこんなこと行っているんだろう」が生まれ、「やらされ」感が生まれます。
要は、現場が経営に関わっている感覚がなくなってしまう要因になります。
なので、目的を「みえる形にすること」が重要になります。
トヨタ生産方式でも、よく「みえる化」という言葉が使われますが、考えずに作業するためという側面と、目的を共有するためのふたつがあります。
目的を共有するために「みえる化」しなければならないのです。
人や組織の考えはやっぱり違うものです。
目的を共有して、同じ方向に向かわせるための「みえる化」というのは、「なぜやっているのだろう」に対抗するための手段です。
改めて、トヨタ生産方式が良くできたものだと感じます。
「そりゃこっちよりこっちの方がいいに決まってるよ」というものが集まっただけと、一見思うかもしれません。
しかし、よく考えてみると、トヨタ生産方式の様々な要素が、それぞれに関係していて連鎖的に相乗効果を生むような形になっています。
実は、industrie 4.0でやっていることも、トヨタ生産方式と同じ目的のことをITを使って行っているか否か、その程度しか違いがありません。
「トヨタ生産方式」が注目され始めたのは、70年代後半に 著:大野耐一 の以下の書籍が出てからですが、未だに通用する考え方が集まっています。
是非一度読んでみてください。これは製造業向けでなく、どこでも通用するノウハウが詰まっています。